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<E3-21>キレる配偶者~事例夫婦A

<E3-21>キレる配偶者~事例夫婦A 

 

 さて、ずっと先送りにしてきた事例を取り上げていくことにします。実際のケースを通してこれまで考察したことを確認し、且つ、取り上げきれなかったところのものも追記しておきたいと思います。 

 最初に「例外」パターンから始めましょう。これはパートナーがキレるということが滅多にないというパターンであります。このパターン(あまり数としては多くないのですが)を取り上げるに際してある夫婦に登場してもらいます。夫婦Aとここでは呼んでおきましょう。 

 カウンセリングを受けに来たのは妻の方でした。夫が激怒した姿を初めて見て、それ以来、彼女の中で動揺が鎮まらないとのことでした。 

 時はちょうどコロナ禍がひどくなり、宣言や自粛によって窮屈な生活を強いられていた頃でした。彼女の夫も窮屈な生活をしていたようでした。慣れない在宅勤務に加えて、会社の存続が危ぶまれていたそうでありました。そんな矢先に、妻のちょっとしたひと言で夫は激しく「キレた」ということであります。 

 夫もそこまで追い詰められていたのでしょう。おそらく、普段の状態であれば気にもならないひと言であったかもしれません。夫は「キレて」しまい。暴力的な行動こそ起きなかったものの、激しく怒声を浴びせかけるのでありました。 

 妻によれば、彼はその後二週間くらいふさぎこんだそうであります。部屋にこもりがちになり、ひどく落ち込んでいるように彼女には見えたそうであります。これは、彼の中で何らかの反省感情が生まれていると評価していいと私は思います。 

 夫の方は、その後、徐々に通常の彼に戻っていき、今は以前と変わらない感じになっているそうであります。でも、妻の方がそのことでずっと尾を引いているのであります。夫がキレてから、実に5か月も経過していたのですが、それでも彼女の中で動揺が鎮まりません。あまりにも長引くのでカウンセリングを受けてみようと思い立ったということであります。 

 どうして私を選んだのかと問うと、私のHPを見て、どこか夫と同じ空気が感じられると彼女はお答えになりました。なんとなく夫という人が分かってくる感じがします。 

 

 さて、5か月を経過しても、彼女の中では動揺が鎮まらないのであります。彼女曰く、交際期間も含めると15年以上夫を見てきているけれど、夫のああいう姿を見たのは初めてのことであるそうです。今まで知らなかった夫の一面を見てしまった衝撃が強かったのでありましょう。 

 ところで、彼女はその後3か月ほどカウンセリングに通われたのでありますが、途中の経緯を省略することにします。必要な部分だけを記述します。従って、以下に述べる事柄が最初から分かっていたというわけではなく、面接を重ねていく中で結晶化していったものであることをお断りしておきます。 

 彼女は、結婚前のことでありますが、夫となる男性のことをあまり好いてはいませんでした。彼は理性的、理知的な感じがして、付き合ってもあまり楽しくないなどと彼女は感じていたようであります。ある時、ちょっとした出来事が起きた時、彼が非常に聡明で頼りになると彼女には映ったのであります。決して感情的にならず、理性的に対処する彼に惹かれたのであります。 

 それから交際が始まって、結婚し、一人の子供をもうけて、現在に至っているという次第であります。その間にさまざまなことが起きたのでしたが、夫はいつも冷静に対処して、理知的に処理してきたそうであります。 

 以上を踏まえると、彼女の中にどういう夫像が形成されているか想像できそうであります。決して感情的になったりすることなく、冷静沈着に物事に対処し、理性的に処理していくといったイメージの人であるようです。キレた時の夫は、彼女の中にあるそのイメージと大きくかけ離れていたのであり、彼女の中にある夫イメージの動揺が彼女の動揺に結びついているようであります。 

 一つだけ補足しておきますと、人は最初に形成した相手イメージをその後もそのまま落ち続ける傾向が強いのであります。初期の段階で形成されたイメージが、修正も更新されることもなく、そのままの姿で何年も残り続けるのであります。 

 よく見られるのは、自分の親に対するイメージであります。子供時代に形成されたイメージをそのまま大人になっても持ち続けているという例がよく見られるのであります。子供に対しても見られるのであります。当然、夫婦においても見られ、あらゆる人間関係で生じることなのであります。余談ですが、「病気」もそうなのであります。病者というイメージがその後もそのままの形で残り続けることが起きるのであります。 

 さて、ケースに戻りましょう。彼女の中では夫イメージが形成されています。それ自体は何も問題ではなく、通常の人間関係で普通に生じることであります。その夫イメージが不変であり、そのイメージと現実の夫とが一致する限りにおいて、彼女は安心できるのでありましょう。交際を始めてから現在まで、それが不一致になるという経験をすることが無かったのでしょう。そして、今回、彼女は初めてその経験をしてしまったと考えられるのであります。 

 相手が、自分がそれまで思い描いていた像と異なる時、そういう瞬間を見た時は非常に衝撃を受けるものであります。彼女もそうであったのでしょう。ここから先が問題でありまして、彼女はそれに対してどうすることもできなくなっているのであります。 

 人はどのようにしてその衝撃から身を守るのでしょうか。一つは、不一致が生じた場合、イメージに合わない方は速やかに忘却するといったことをするでしょう。相手の機嫌がたまたま悪かっただけだとか、相手も人間なので怒りたくなる時もあるだろうとか、そうしてそれを無効化して、最初のイメージを維持するでしょう。 

 もし、イメージが一変した場合、人によっては以前のイメージに適合するよう、現実の相手に働きかけるということをするでしょう。あるいは、以前のイメージの方を切り捨てるということもあるでしょう。 

 彼女の場合、夫のそれまでのイメージと、キレた時のイメージと、その両者をどのように扱っていいのか分からないということであります。それに対して何の対処もできないわけであります。上述のように、キレた時の夫を偶然として処理することもいいのでありますが、私が思うに、両方の像が統合されている方が好ましいのであります。 

 つまり、夫は常に理性的で頼りになるが、追い詰められるとキレることがある、とそのように彼女の中の夫像が修正されていくと望ましいと考えています。一部分を、否認して切り捨てるよりも、それまでのイメージ像に組み入れていく方が、夫婦のような長い関係を築く場合にはいいと私は考えています。 

 夫婦は長い年月の間にお互いに相手イメージを更新なり修正なりをしていくものであります。彼女の場合、初めてのことであったのでしょう。彼女は、キレた夫を恐れているというわけでもなく、また、今はいつもの夫に戻っていることも分かっています。キレた時の夫を限定化しています。その時だけのこととして限定できています。従って、一緒に生活していく上で不安はなかったのでした。  

 彼女の中で夫イメージの更新作業をしていく必要があったわけでありますが、彼女の場合、割と柔軟なところがあり、比較的スムーズにその作業が進展したように思います。キレた夫像がどうしても受け入れることができないといった頑なさが少なかったおかげで、短期間で彼女は落ち着いていったのであります。 

 

(文責:寺戸順司―高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)