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<E3-25>キレる配偶者~事例夫婦D

<E3-25>キレる配偶者~事例夫婦D 

 

 キレる配偶者の事例を検討しているところであります。これまで例外パターン、引き下がりパターンの夫婦を見てきました。順序としては、ここで瞬間型を取り上げることなるのでありますが、あいにくなことに、このパターンに関してはあまり言えることがないのであります。 

 まず、このパターンではキレる当人がカウンセリングを受けることがほとんどないので、彼らがどういうことを経験しているのか不明であるからです。キレられる側の報告に基づいて推測していくしかないのであります。 

 また、このパターンでは行動化が伴うことが多いので、クライアント(キレられる側)の身の安全を確保することから始めなければならず、夫婦の内情に迫っていくことが後回しになるのであります。そのため、得られる情報も限られてしまうのであります。 

 ここでは、おそらく瞬間型に属するであろう夫の一場面だけを取り上げることにします。本項では夫婦Dと称しておきます。 

 

 クライアントは妻であります。キレるのが夫であります。彼らには子供もいます。夫がキレた場面を以下に提示します。 

 その日は夫の休日であったようで、夫は昼寝をしていたそうでありました。そこで電話がかかってきて、夫は起きて電話に出たのであります。寝起きの状態なので、意識水準がそれほど高くない状態であったかもしれません。 

 電話の相手は娘の通っている塾の講師でした。講師は娘の成績が良くなっているという報告をしたのでした。 

 どのようなやりとりがあったのか分からないのであります。また、どれくらいの時間、電話で話していたのかも分からないのですが、急に夫がキレだしたのであります。 

 夫は、電話越しに、講師をめちゃくちゃにけなし始めたそうであります。そして、電話を切ると、「あの講師、ビビっとった」などと言ったそうであります。これは反省感情の欠如を示すものであります。 

 そして、あんな塾はやめて、他の塾に行かせる(これはリセットであります)という話をすると、娘がワーッと泣き叫んで家を出たそうであります。 

 以上が一連のエピソードなのでありますが、夫の言い分はどのようなものでしょうか。夫はあの講師が若くてチャラいと言います。それが気に入らないのでしょうか。そして、塾で娘が夜遅くまで勉強していること、その塾の中で成績が上がっただけのことなどの不満を述べるのであります。そして、その塾は授業料が他よりも高いなどとも言います。こういう理由はほとんど当てにならないものであると私は考えています。 

 妻の話によると、その塾を選んだのは夫の方であります。授業料も他とそんなに変わらないとのことであります。加えて、娘はその塾に喜んで行っているそうであります。 

 以上を踏まえると、娘がその塾に行ったのは良かったことであるし、夫がその塾を選んだというのも正解だったということになります。それで娘の成績が上がったというのであれば、夫もそのチャラい講師にお礼の一つも言うのがスジであります。一体、どこに夫をそこまで激怒させる要素があるのでしょうか。 

 

 夫の方は講師を打ち負かして満悦しているのでありますが、これもおかしな話であります。講師はいい知らせを届けようと思って電話をかけたのであって、夫と争うつもりではないのであります。つまり講師の方では臨戦態勢が整っているわけではないのです。 

 次に、夫が急にキレだすということは、講師の方でも予期していなかったでしょう。従って、夫の攻撃は奇襲攻撃とか不意打ちのようなものであります。当然、講師の方は戸惑うでしょう。戸惑う講師にさらに追い打ちをかけていくようなことを夫はしているということになります。 

 また、立場も対等ではありません。講師は娘さんを預かる立場にあります。父親(夫)に対しては言いにくい立場にあるわけであります。夫の方は、むしろ、講師に対してはモノを言える立場にあるわけであります。言える立場といいにくい立場とができているのであります。 

 これだけ講師にとって不利な条件が揃っているのに、夫が勝ち誇っているようなのであります。傍目から見ると、この夫はかなり卑怯者であります。 

 しかしながら、夫は何に「勝った」のでしょう。 

 

 このような例を聴くことも多いのであります。キレる人が誰かと話している最中にいきなりキレるというエピソードであります。 

 この例でも、夫と講師の正確なやりとりを知りたいのでありますが、それは得られないのであります。一体、講師の言葉の何が夫には引っかかったのでしょうか。 

 いや、そのように考えるのも適切であるかどうかが決定できないのであります。そういう言葉があったかもしれないし、なかったかもしれないのであります。 

 ビオンの変性理論では、言葉は対象の不在を意識させ、羨望を掻き立てる敵意に満ちたものになるといいます。これをベータ要素と呼んでいるのでありますが、言葉がその言葉通りのものとして伝わらないのであります。 

 ベータ要素は、人格の精神病的部分から発せられるということであります。この精神病的部分は誰もが有するといいます。対象不在の欲求不満の苦痛を回避するためにベータ要素が発動するということなのでありますが、これにより意味ある交流が障害されてしまうのであります。ビオンの理論は精神病に関するものであり、この例にそのまま適用するわけにはいかないのでありますが、こうした理論基づくと、どのような言葉であれ、脅威となり得ると私は捉えています。 

 言葉は、それの通常の意味のものではなく、まったく別のものと変わり得るのであります。もし、そうであれば、講師の何でもない普通の言葉でさえ、夫には脅威となったのかもしれません。 

 講師を打ちのめすということは、その脅威を除去する意味合いが含まれてくることになります。そして、講師に勝ったという感情は、その脅威に勝った、もしくは、その脅威の除去に成功したという感情と重複しているのかもしれません。言い換えると、夫は二重に戦っているようなもので、心の中で体験されている脅威と戦うだけでなく、現実の相手に対しても攻撃しているということになるわけであります。外界の相手と内面の感情とが区別されていないのであります。 

 

 さて、最初に述べたように、この夫がどのようなことを体験したのかは分からないのであり、ここで述べたことはすべて私の憶測の域を出ないものであることをお断りしておきます。 

 

文責:寺戸順司―高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)