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<E3-26>キレる配偶者~事例夫婦E

<E3-26>キレる配偶者~事例夫婦E 

 

(適応の問題) 

 配偶者がキレるというと、暴力とか暴言の類の問題がイメージされることと思います。事実その通りなのでありますが、そこにだけ目を奪われるわけにもいきません。いくつもの角度から見ていく必要があると私は思うのです。 

 まず、パートナーが頻繁にキレる、それも瞬間的にキレるという場合、そこで何が生じるのでしょうか。 

 私たちの生活には流れがあります。今現在の前に以前があり、現在の後には以後が続きます。流れは、速いこともあれば緩やかなこともあるでしょう。どちらにしても、安定して流れていると落ち着くということが言えるように私は思うのです。あるいは、安定して流れており、変化が緩やかであれば、その場の適応は容易になると私は考えています。 

 パートナーがキレるというのは、それも急に瞬間的にキレるというのは、この流れがいきなり断たれるということであります。流れが急変するわけであります。キレられる側は(おそらくキレる側も)、この急変についていけないのであります。こういってよければ、家庭内の雰囲気とか世界が、急に変わって、まったく違った雰囲気、まったく思いもしない世界になってしまうということであります。急激に変わった世界に適応しなければならないのですが、思いもしないだけに、ついていけないといったことが生じるのではないかと私は思うのであります。 

 

 ある中年に達した妻のケースが分かりやすいでしょう。ここでは夫婦Eとしておきます。この妻がキレられる側であり、私のクライアントでした。 

 彼女は、キレる夫との夫婦関係の問題に加えて、自分自身の問題として、新しい環境に入っていけないということを挙げるのでした。 

 彼女たち夫婦には子供がありましたが、子育てが落ち着いたら妻にも働いてほしいと夫は頼んでいたそうであります。これに関しては、彼女自身そうしたかったと言うので、それはいいとしましょう。 

 子供が小学生になると彼女は半日だけのパートを始めたそうであります。その時にものすごく緊張したということを彼女は覚えていたのです。そして、慣れるまでにけっこうな時間がかかったという体験を持っておられるようであります。これが彼女の最初の体験であります。 

 その後、半分は夫の要請によって、彼女はパートを転々としてきました。夫の要請というのは、あそこは時給が低いからもっといいところで働けとか、そんな遅くまで拘束するような職場は辞めてしまえとか、そういうことを夫が言い、彼女はそれに従ってきたそうであります。ただ、いくつかは彼女自身の意志で転職したそうであります。 

 彼女は新しい職場環境に入っていく時にはいつも激しく緊張するそうであります。環境に入っても慣れるのに時間がかかるというのです。最初のころはそこまで問題視していなくて、場数を踏めばそのうち慣れるだろうと思い込んでいたそうなのですが、彼女の予測通りにはなっていないわけであります。 

 職場だけでなく、例えばPTAなんかの場面でも、あるいは趣味のサークルのような場面でも、彼女は同じような体験をされるのであります。最初にその場に入る時には非常に緊張し、慣れるまでにけっこうな時間がかかるというわけであります。 

 もともと彼女はそういう人だったのでしょうか。どうもそうではないようであります。彼女が記憶している限りでは、昔はそうではなかったということであります。昔というのは、要するに結婚以前のことであります。新しい環境に飛び込むことは、緊張もあるけれど、楽しいことでもあったようであります。その同じ人が今では新しい環境にそこまで怖気づくようになっているわけであります。 

 しばしば、子育てのために一時的にブランクが空いているので、そのために緊張するのではないかといった説明をする人もあるのですが、彼女の場合、それもあまり当てはまらない気がします。最初の体験ではそうであったかもしれませんが、それが何年も何年も、あるいは何回も繰り返されているとなると、別の理由がありそうであります。 

 今(つまりカウンセリングを受けに来たころ)、彼女は正社員として働いています。もうそろそろ職場に慣れてきた頃であります。この職に就くために彼女は資格を取得しているのでありますが、この資格が自分を助けてくれると期待していたのかもしれません。ところが、資格を有していても、新しい環境に入っていくことに彼女は物怖じしてしまったのでした。資格はあまり彼女の助けにはならなかったようであります。 

 資格を取得して、正社員として働き始め、ようやくその環境に慣れてきたということであれば、あとはそのまま続ければいいのでありますが、ここで夫から「辞めろ」の一声が飛んできたのであります。夫の方で生活環境が変わるので、妻がその仕事をしていると何かと不都合があるということであるらしいのです。要するに、彼女は夫に合わせて再び仕事を替えなければならないという状況に置かれているのであります。 

 ちなみに、これが「リセット」であります。不都合とが不具合がある場合、すべてをリセットするのであります。ここでは妻の方をリセットさせようということになっているわけであります。 

 当然、彼女は今の仕事を辞めたくないと言い張ります。妻に今の仕事を続けてもらって、なおかつ、自分の新しい生活をやっていく方策を夫は立てないのであります。リセットはそんな複雑なことを考える手間を省くというわけであり、夫は思考することの必要がないのであります。 

 それはさておき、ここまで読まれている方はうすうす気づいていることと思います。なぜこの妻は新しい環境への適応に困難を覚えるのでしょうか。それは自分の家庭に適応できていないという感覚を持っているためではないでしょうか。夫と子供との、自分の家族の場においてさえ適応できていないというふうに彼女は体験しているのではないでしょうか。家庭でさえ適応できていないのに、新しい環境に果たして適応できるだろうか、そんな恐れが彼女の中にあるのではないでしょうか。 

 もしかすると子供の方にも同じ恐れがあるかもしれません。子供の方もあまり適応がよくないのであります。夫(父)が急変してキレるのであります。一気に世界が変わるのであります。それまでの世界とは全く違った新しい世界が急に生まれるのであります。そこに適応することの困難が背景としてあるのではないでしょうか。私は確実にあると考えています。 

 

 この夫がどれくらい頻繁にキレるのかは、正確には分からないのでありますが、この夫が家庭内の世界を一変してきたのでありましょう。急激に変わる世界、急に新しくなる世界に、どう適応していけばいいのか、それは妻の職場適応困難の問題と関連しているものと私は考えています。 

 

(文責:寺戸順司―高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)