大阪府高槻市のカウンセリングセンターでうつ病のご相談

大阪府高槻市の心理カウンセリング

お気軽にお電話ください TEL:072-673-8180 営業時間:10時~20時 休診日:火曜日

うつ病、ストレスをお感じなら大阪の高槻カウンセリングセンターへ

「こうあるべき自分」から「こうありたい自分」へと目指していきませんか?
  • ホーム
  • <E3-27>キレる配偶者~事例夫婦F

<E3-27>キレる配偶者~事例夫婦F

<E3-27>キレる配偶者~事例夫婦F 

 

 前項(E3-26)では、キレる夫に適応できないケースを挙げたのですが、本項で取り上げるのは、ある意味ではキレる夫に適応した妻であります。夫婦Fとしておきましょう。この妻がカウンセリングを受けに来たのであります。 

 

 この夫は頻繁にキレて、言葉だけでなく、激しい行動化もするのであります。警察沙汰になったことも幾度となくあり、隣近所に迷惑をかけてきた歴史があります。 

 結婚も、妻の方はともかく、夫の方は愛情なんてなかったのではないかと私も思うのであります。都合がいいから結婚したという印象がどうしても私の中で生まれてしまうのであります。 

 彼女が妊娠、出産した時も夫は立ち会わず、乳児を抱えている妻を独りのこして遊びに行くというような夫でありました。そして機嫌が悪くなるとキレだして、彼女は小さな子供を抱えて逃げなければならないありさまでした。 

 ところが、この夫婦、夫がそんな人であるのに、妻は離婚しないのであります。妻が精神科医に相談したところ、夫のような人は治らないと、悪い意味で太鼓判を押されてしまったにも関わらず、彼女は夫とは離婚しませんでした。何が彼女をそうさせたのでありましょう。 

 

 一つだけ妻のエピソードを取り上げましょう。ある時、同窓会があって、彼女も出席したのですが、お世話になった同級生を激しく罵ってしまったというのであります。それ以来、同級生たちとは疎遠になってしまい、今では彼女はそのことをひどく後悔しているのです。 

 私は彼女が同級生にどういうことを言って罵ったのか知りたいと思いました。というのは、彼女を見ていると、そういうことのできる人のようには私には思えなかったからであります。実際の彼女はもっと朗らかで人当たりがいいのであります。そういう人が友達に激しく罵声を浴びせたというのであれば、よっぽどのことが彼女の中に生じていたのだと思うのです。 

 しかし、彼女は最初のころはそれに答えてくれませんでした。ただ、相当ひどいことを行ったんです、くらいにしか答えてくれませんでした。過去の話なので一言一句再現してほしいと頼むのは無理なことでありますが、せめてどのようなことを言ったのか知りたいと思っていました。私の中に一つの仮説があったからであります。 

 どういう仮説かと言いますと、彼女の放った罵声は、夫が放つようなものではなかったのか、というものであります。それは夫の言葉であり、彼女の言葉ではなかったのではないかということであります。言葉を放ったのは彼女であっても、その言葉は夫に属するものではなかったのかということであります。 

 後になって、彼女はそれを肯定しました。確かに夫が言いそうなことであった、と。 

 どういうことであるかと言いますと、当時の彼女は夫の言動を取り入れていたのであります。夫の言動を取り入れ、夫と似た者同士になることによって、夫の攻撃の矛先が自分に向かないようにしたのであります。もちろん、彼女は意図してそうしたわけではなく、無意識的にそういうことが彼女の中で起きていたのだと私は思います。「攻撃者との同一視」の変形と私は考えています。 

 私はこの同一視は夫からの攻撃を回避する意味があると考えているのですが、現実にはどれほどの効果があったのは不明であります。仮に、そういう意味がなかったとしても、彼女には夫がそれだけ影響力が強いということを表しているようにも思われてきます。 

 また、そのことが彼女が夫と離婚しなかった要因の一つでもあったと、私は仮定しています。ある意味では夫と同類に人間になっていたからであります。他にも要因とか理由があるのでしょうけれど、一つの要因としてそれがあると考えています。 

 いずれにしても、夫が強い影響力を持っていて、おそらく、彼女は夫のことを相当恐れていたのではないかと察するのであります。 

 彼女が同級生に罵声を浴びせたころ、それは彼女が一番荒れていたころになるのですが、すべて夫の影響によるものであって、彼女は本来の彼女を生きていなかったと私は考えています。 

 現在、彼女は夫とは距離を取って生活をしており、それで上手くやっているようなので、私も安心であります。疎遠になった同級生たちにも謝罪して関係を回復しようと努めています。また、彼女自身がやってみたいと思う仕事にも取り組もうとされています。私は彼女はそれができると信じております。彼女本来の人柄が出れば、彼女は人に好かれるだろうと私は思っています。 

 

 さて、余談でありますが、キレる夫に同調して妻もキレっぽくなるというケースが二例ほど私にはあるのですが、それはもうひどいものでありました。クライアントはやはり妻の方であります。彼女たちの話を伺っていると、本来はそういう人ではなかっただろうにと思うのであります。 

 夫に同調して、夫と同一視して、似た者同士になって、それによって夫にキレられることはなくなったとしても、周囲からは孤立してしまっているのであります。要するに、夫婦そろって嫌われ者になっているということであります。 

 年齢を重ねていって、夫の方が破綻していくのは許せても、妻も一緒になって破綻してしまうのであります。長年、似た者同士でやっていると、もうそれに違和感を覚えなくなるのかもしれません。夫婦が共倒れする例も経験しているので、本項で取り上げた夫婦Fさんにはそうなってほしくないという気持ちが生じるのであります。私の逆転移であります。 

 

 ちなみに、そういう夫婦がどうなるのかということですが、キレる夫の敵は妻にとっても敵になるので、二人で同じ人間にキレるということもあるのです。あるいは、夫がある人にキレたら、妻は夫をサポートするような感じになるのであります。いわば、共通の敵でつながった夫婦という様相を呈するように私には感じられるのであります。 

 いずれにしても、キレる側(この場合は夫)に対する恐怖感が根底にあると私は考えています。この恐怖感から、妻(かつてはキレられていた側)は夫に従っていくようになるのではないかと思います。 

 

(文責:寺戸順司―高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)