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<T007-17>Aさんの事例(2)

コラム17~離婚(2):Aさんの事例(続き) (約2500字) 

 

(再びAさんの事例に戻って~離婚の先にあるもの) 

 Aさんのカウンセリングは8回程度で終了したのですが、妻に対する不平不満は最初の頃に少し見られただけでした。彼は言います。「妻のことに関しては腹が立つこともあるし、不満もあるけど、どういうわけかあまりそれを話す気にもなれない」と。 

 私は、Aさんが妻のことで苦しんでいるのだから、当然、妻に対しての愚痴がもっと彼から語られるだろうと思っていたのでした。彼がそう言うのだから、無理に愚痴を語らせる必要もないので、「今後、どんなふうになればAさんにとって望ましいことなのでしょうか」と尋ねてみました。彼は、「離婚した方がお互いの為だと思う」と答えました。彼の気持ちは、この時点でかなりはっきりしていたようでした。 

「それでは、離婚してからどのようなことをしたいと思いますか」と私は尋ねました。この質問に彼は答えにくそうでした。それもそのはずで、離婚するということが彼の最大の関心事であるのに、それより先のことを聞かれているのですから、彼が「そんなこと考えたこともない」と答えたのは当然でした。 

「考えたこともないから答えられないのは当然ですよね。でも、いい機会になるかもしれませんから、この場でそれを少し考えてみるのはいかがでしょう」と私は、彼に考えるように促しました。 

 彼が考えるために私はいくつもの質問をしてそれを手助けしました。例えば「離婚することによって、あなたが得られるもの、もしくは取り戻せることがあるとしたら、それはどんなことでしょう」とか、「離婚してから、あんたはどんなふうに変わっているでしょう、今とどういうところが違ってくるでしょうか」といった質問をしていきました。こういう話し合いは、カウンセリングというよりも、むしろコンサルティングに近いものです。彼は、離婚後の自分というものをなかなかイメージできませんでした。私は「現実の制約を一時的にでも無視して考えてみませんか」といった助けを出していかなければなりませんでした。 

 こういう話し合いを何回か続けていく中で、明確になったことを要約すると次のようになります。まず、Aさんは、家庭よりも仕事に戻りたいと考えていること。仕事の方を生きがいにしたいということ。それは、彼には仕事に対しての理想があるからで、家庭を持っていては、その理想が達成できないように思われること。それが達成されてからでないと、再婚のこと、家庭を築くことは考えられないということ。離婚した場合、妻と子供への生活費はきちんと送るつもりでいること。そのための経費を別にしても、贅沢さえしなければ一人でも生活できるめどはついているということでした。 

 

 

(離婚後の生活を考えるということ) 

 前回同様、ここまでのことで少し解説をしていくことにします。 

 離婚するかもしれないという危機感から、カウンセリングを受けにきた人の大部分は、離婚してしまった後のことを考えていないという傾向があるようです。目先の事柄にあまりにも囚われ過ぎているということであります。仮に、考えていたとしても、それが漠然としていたり、非現実的であったりすることもあります。離婚するにしてもしないにしても、お互いにその後の人生があるので、その後のことを現実的に検討しておくことは有益であると私は考えております。 

 Aさんも、他の多くの例と同様に、目先の離婚のことで頭がいっぱいで、それから先のことは視野に入っていないという感じでありました。彼は、私の質問にすらすらと答えたわけではありません。随分深く考え込みながら、時間をかけて答えたものでした。これは私の質問が難しいからではなく、私が質問するようなことを彼が考えたこともなかったためなのでした。考えたことがあったとしても、改めて質問されると答えられないことが多く、その時になって初めて十分に考えていなかったことが分かったり、考えているつもりでいたということに気付いたということも多いものであります。 

 ここで指摘しておきたい点は、考えるのはAさんの仕事であり、カウンセラーである私は質問したりして、Aさんが考えるのを手伝っているということであります。カウンセリングでは、作業をするのは常にクライアントの方でなければならず、カウンセラーが代わりに考えてくれるものではありません。もし、アドバイスを与えるタイプのカウンセラーがいたとしても、そのアドバイスを受け入れるかどうかはクライアントが決めなければならなくなるのです。カウンセリングの場において、クライアントは常に自分の生活や人生、考え方や物の見方について、向き合うことになるのであります。 

 

(愚痴の効用) 

 Aさんのケースでは、妻に対しての愚痴がほとんどありませんでした。家庭内では妻のことで腹を立てながら、カウンセリングの場では、それがあまり語られませんでした。 

 よく、「愚痴をこぼしても解決にはならない」と言って、愚痴をこぼそうとしない人もあります。その人はある意味では正しいのです。愚痴は直接的に解決につながることはありません。しかし、愚痴をこぼしているうちに見えてくることがあり、もしくは愚痴を十分にこぼした後で見えてくるものがあり、それらが解決に役立つということも案外多いものであります。直接的な解決はもたらさないかもしれないけれど、愚痴をこぼすことによってもたらされるものもあるということであります。これを「愚痴の効用」と私は呼んでおります。 

 さて、Aさんは妻に対する愚痴をこぼしませんでした。このことは何を表しているのでしょうか。妻に関して愚痴をこぼしている時、その人は、どこかで妻に対する未練や期待を語っているものであります。Aさんが妻への愚痴をこぼさないということは、このこともまた妻に対しての感情を語っているものとみなすことができ、その感情とは、妻に対して期待することも未練もないという感情ではないかと思われます。それだけに、彼の離婚への決意は相当しっかりしているとみてよいと思われました。 

 

(文責:寺戸順司―高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー