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<T2-5>怒りは基本感情の一つである

<T2-5>怒りは基本感情の一つである 

 

 私たちは誰もが感情を有しています。感情を体験します。怒りは感情の一つであり、それも基本的な感情の一つなのです。 

 基本的というのは、それが大人から幼児にまで見られ、人種や文化の違いに関係なくすべての人に見られるという意味で捉えていただいたら結構です。 

 生まれたばかりの赤ん坊の泣き声は怒りのようであるとカントは指摘しています。確かにそのように響くのです。実際に怒りを新生児が体験しているかどうかは分からないとしても、怒りというものが生まれたばかりの赤ん坊にさえ備わっている感情であるとみなすことは可能だと私は考えます。 

 メニンガーが述べている通り、私たちは怒りの感情を有して生まれてくるのです。生まれてから、それの使用を学ぶのです。 

 怒りの感情が基本的なのは、それが自分を守るのに有益だからだと私は考えます。そして、それは心の活動性や躍動性と関係していると私は捉えています。 

 怒りは厄介な感情であるかもしれませんが、だからと言って、怒りを失くそうという目標を立てると、必ず失敗することになります。そういうことは不可能だからです。 

 それに感情はそれぞれ個別なものではありません。一つの感情はその他の感情とつながりを有しているものです。怒りを抑制しようとしてきた人は、他の感情をも巻き込んでしまうのです。こうして、その人からは感情全般が低下してしまって、心の中に生き生きしたものを失うのです。無感動な人や無気力な人と接していると、そのことがよく理解できるのです。 

 怒りは基本的な感情であり、それを喪失することは、その他の望ましい感情やその人の人間性まで喪失してしまう結果になりかねないのです。人間が怒らなくなるということを目標に据えてはいけないと私は思うのです。 

 よく勘違いされる方も見受けられるのですが、人格的に優れた人は怒らないと思い込んでおられる方がいらっしゃいます。それは正しくないと私は思います。どの人も怒りは体験するのです。その人が優れているのは、怒りを体験しても攻撃をしないというところにあるのです。 

 つまり、優れた人は怒りを体験しても相手を攻撃せず、それでいてそれをただ抑え込むということをしないのです。怒りに対して、別の水路づけができているわけなのです。 

 

(文責:寺戸順司―高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)