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<T2-8>愛と憎悪は水と火の関係

<T2-8>愛と憎悪は水と火の関係 

 

 愛と憎しみは表裏一体だという見解には注意が必要です。もし、それら一体のものであるとすれば、子供をもっとも虐待する親が子供を深く愛している親だということになってしまいます。ヒトラーがユダヤ人を虐殺したのは、ヒトラーがユダヤ人をこよなく愛したからだという理屈が通ってしまいます。これは頷くことはできない理屈なのです。 

 愛と憎悪はまったく別の感情であり、一体になることは決してないのです。 

 それが表裏一体のように見えるのは、ある一部分において、両者が関係してしまうからです。私はそれを火と水の関係のように捉えています。 

 水と火はそれぞれ別個の物質であり、現象であります。でも、水は火を消すことができ、火は水を蒸発させることができるという点で、両者は関係を有します。水と火は同居しえないのです。同居すればどちらかが消失することになるのです。愛と憎悪もこれと同じような関係ではないかと私は捉えています。 

 愛は憎悪を癒やし、憎悪は人から愛情を奪うものです。憎悪を抱える人は人を愛することができないのです。何人も私はこういう人を見てきました。その人にとって、他者は常に内面に抱える憎悪を刺激する人物になってしまうのです。とても愛することなんてできないのです。 

 愛する前に憎しみが前景に出てしまったり、憎しみを晴らしてからでないと愛せないと感じている人もおられます。これは愛情能力がひどく制限されていることを示すものだと思います。 

 一方、本当に人を愛することができる人は憎悪から解放されているのです。でも、これはとても難しいことです。「汝の敵を愛せ」というキリスト教の教えは、愛情能力の回復を訴えているものだと私は理解しています。多くの人がそれに困難を覚えるからこそ、こういう教えがなされてきたのだと思います。 

 憎悪を抱えている人でも、例えば結婚している人もあり、上手くいっている場合もあります。でも、よくよく見ると、それは憎悪でつながっている関係であったりします。ある夫婦は共通の敵で結びついており、お互いに自分の憎悪を助長し合っていました。この夫婦には愛情なんてありませんでした。この夫婦においては、相手はいわば戦友のような感じではなかったかと思います。 

 しかし、中には、相手を愛すると同時に憎悪もしていると体験している人もあるかもしれません。もし、そういうことが本当に起きているとすれば、それはその人が内部分裂を起こしていると私には思われるのです。一方の彼が相手を愛し、他方の彼が相手を憎み、それを同時にやっているということになるからです。 

 ここまで極端でない場合、そしてこういう場合の方が圧倒的に多いのですが、一人の相手に対して憎しみと愛とを交互にしているものです。ある時には愛し、次の時には憎み、さらに次の時には愛していたりするのです。相手が両価的なのです。でも、この愛は本当の意味での愛ではない場合が多いというのが、私の感想であります。 

 

(文責:寺戸順司―高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)