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<T6-14>(R3-13)「治療」には時間がかかる?

<Ⅲ-13> 「治療」には時間がかかる? (約4900字) 

 

 「心の病」の治療過程などを見ると、よく三年とか五年とか、あるいは十年とかかかっているのを目にします。確かに「短い」とは言えない期間です。「治療」にはそれだけの時間がかかるものです。 

 しかし、時間がかかるから、それは効果がないとか意味がないと捉えるのは、とても短絡的であると私は考えます。また、時間がかかるから「治らない」と捉えるのも間違っているように思うのであります。効果があるから時間がかかっているのかもしれないし、「治る」から時間がかかっているのかもしれないし、そのような発想を私たちはもっとしてもよいのではないかと思います。 

 

 私が初めてクリニックに努めた頃、そこに十数年通い続けているクライアントがいて、私はとても感動したのを覚えています。一人の臨床家とクライアントがそれだけ長い年月にわたって関係を築いているなんて、なんて素晴らしいことだろうと感じたのであります。そのクライアント以外にも、数年間通っているというクライアントが何人もいました。私は、クライアントの人生のうちのそれだけの年月を一緒に共有できるなんて、カウンセリングとはなんて素晴らしい仕事だろうと、純粋に考えるようになりました。 

 ところが、しばらくそこで働いているうちに、私の最初の感想は揺らぎ始めました。長い年月にわたって、クライアントがカウンセリングと関わり続けているということが、果たして本当に望ましいことなのだろうかという疑問が湧いてきたのであります。むしろ、カウンセラーはきちんとクライアントと別れてあげなければいけないのではないかと考えるようになったのであります。クライアントが自分の人生に戻ること、その頃はそれを第一に考えていたのです。 

 しかし、私はその後も繰り返し、長くかかるクライアントを目にすることとなり、また、そのようなクライアントが新たに生まれるのを見るたびに、私は苦しくなってきたのです。クライアントが独り立ちすること、それこそカウンセリングの目標ではないかと考えていた頃なので、クライアントを長引かせることは、その目標から離れてしまっているのではないかと思うようになりました。つまり、クライアントが「悪く」なる方を援助してしまっているのではないかという心配だったのです。最善を尽くして、クライアントと関係を築いたけれども、もしかすると、それがクライアントをカウンセラーから離れられなくしてしまっているのではないか、もしそうだとすれば、クライアントのためによかれと思ってしていることが、返ってクライアントを束縛し、「悪く」してしまっているのではないかという不安に襲われました。 

 それで、一旦は、私はカウンセリングに失望して(失望した理由は他にもあるのですが)、この道から遠ざかりました。それからしばらく、いくつものアルバイトをして食いつないだ時期を経ました。 

 もう一度カウンセリングに戻ろうと決心したのは、ある本のお陰でした。カウンセリングからは離れていたけれども、その手の本は読み続けていたのでした。ちなみにその本というのは『解決のための面接技法(第2版)』(ピーター・ディ・ヤング、インスー・キム・バーグ著  金剛出版)であります。この本のお陰で、私はそれまで抱えていた疑問の解決の糸口をつかんだのでした。 

 同書はソリューション・フォーカス・アプローチ(以下SFA)という技法について書かれた本でありますが、私にとって新たな発見であったのは、その技法ではなく、クライアントとカウンセラーを結びつけるものという発想でした。私の見解では、通常クライアントとカウンセラーはクライアントの「問題」で結びついている関係なのですが、SFAでは「問題」で結びつくのではなく、「解決」で両者を結び付けようとしているのであります。 

 一時期はSFAをよく勉強しましたが、今では全面的にそれに賛成しているわけでもありません。技法のいくつかは応用させてもらっていますが、やはり、私なりにそれの限界も見えてきたように感じています。ただ、カウンセラーとクライアントを結びつけているものは何かという点に関しては、SFAの恩恵を受けていることに変わりはありません。SFAでは「解決」を両者の絆にしようとしているようでありますが、私は「解決」よりも、「安心」や「信頼」でクライアントと結びつく方が絶対に必要であると考えております。このことは後で述べることになるでしょう。 

 クライアントは自分の「問題」や「病」をどうにかしたくて、臨床家を訪れるものであります。この時、両者はクライアントの「問題」や「病」で結びつくことになります。クライアントの「問題」や「病」で両者が結び付いているということは、常に二人の関係にそれらが持ち込まれるということであります。 

 そして、ここからが重要な私の洞察なのですが、もし、クライアントが「このカウンセラーから離れたくない」という気持ちに陥ったとしたら、クライアントは何をしなければならなくなるかということであります。それが「病」で結びついた関係であれば、クライアントはカウンセラーから離れないために「病」を抱え続けなければならない、もしくは他の「病」を提示しなければならなくなるということであります。同様に、臨床家の方も、もし「このクライアントを手放したくない」という気持ちに襲われたとしたら、臨床家は常にクライアントの「病」を見つけ続けなければならなくなるということであります。これが長引くことの一つの要因で、しかも最も良くない要因であります。 

 私なりに達した結論を述べれば、カウンセラーとクライアントとを結びつける絆が「問題」や「病」であり続ける場合、なかなか「治療」は展開しないものであり、クライアントは返って「問題」や「病」に留まり続けることになる。一方、両者を結び付ける絆が、「問題」や「病」ではなく、例えば「安心」や「信頼」といったものに置き換わっていけばいくほど、クライアントは「安心」や「信頼」に留まるように、つまり「良くなって」いくのであります。最近、私はますますそのことを確信するようになりました。 

一つ押さえておかなければいけないポイントは、カウンセラーとクライアントの両者が「問題」「病」で結びついていようと、「安心」「信頼」で結びついていようと、それは長期化することとは何の関係もないし、どちらで結びついても、期間の長短だけに関して言えば、違いはないのであります。しかし、その長期化の内容や質といったことが決定的に異なるのであります。 

 

 あるクライアントは「問題」「病」に苦しめられる度に私を訪れます。この人とは長く続かないのが常でありました。1~2回の面接を、断続的に繰り返していました。その人は自分が具合が悪くなればカウンセリングを受けるという発想をしていたようです。従って、私たちの間には常に「問題」「病」が存在しており、それ以外の何かに置き換わることはありませんでした。その人はこれまでいろんな臨床家に罹ってきた経歴がありました。臨床家だけではありません。その人の話を詳細に追っていくと、普段の人間関係においても、その人は自分「問題」や「病」で周囲の人たちと結びついていたのでした。その人にとって、臨床家や周囲の人からの関心や注意を求めるということは、また、人からの愛情やケアを得るためには、その人は常に「問題」を抱えた人でなければならず、「病人」でなければならなくなっていたのであります。 

 また、別のクライアント、上手くいったクライアントにおいては、最初は「問題」や「病」で私たちは結びついていました。これは避けられないことであります。しかし、徐々にではありますが、私たちを結び付けているのが、「問題」や「病」ではなく、「安心」や「信頼」へと移っていきます。もしくはこのように述べる方が適切かもしれません。最初は私たちは「問題」や「病」で結びついていたが、それ以外のことでも結びつくようになった、つまり、「問題」や「病」は私たちを結び付けている数ある絆の一つとなっていったと表現できるかもしれません。しかし、そのように私たちの絆が変わっていくに従って、クライアントは目に見えるほど「良く」なっていくのであります。このような関係になったクライアントほどよく「治って」いくのであります。 

 カウンセラーとクライアントを結びつけるものが「安心」や「信頼」といったものに変わっていくということは、クライアントは「安心」や「信頼」のためにカウンセリングを受けに来るようになり、「問題」や「病」のためにカウンセリングを受けに来るという感覚ではなくなっているのであります。こうなると、クライアントにとってカウンセリングは苦痛ではなくなるのであります。そして、苦痛でなくなるほど、クライアントはカウンセリングに通いやすくなりますので、必然的に期間は長くなるのであります。 

 

 さて、ここまでのことを簡単にまとめておきましょう。カウンセリングや「心の治療」は時間がかかるという見解に対して、時間の長短ではなく、両者の関係の質こそが着目されなければならないということが、ここでの私の主張であります。SFAは行き詰った私に洞察を与えてくれました。しかし、カウンセラーとクライアントは「解決」だけで結びつくものでもないという点で、私の見解はSFAとは異なっています。「問題」「病」ということも、「解決」ということも、カウンセラーとクライアントを結びつける絆の一つに過ぎず、他にもいろんな要因で両者は結び付くことができるのであります。ここでは「安心」と「信頼」とを挙げましたが、他にも「愛情」とか「共有」とか「尊敬・尊重」といった絆もあるでしょう。いずれにしても、クライアントは初めに自分の「問題」や「病」を持ち込み、それらがカウンセラーとの関係を結ぶ絆になるのですが、それだけで結びついている関係が問題なのであって、そこに先述したような他の要因で両者が結び付くことが必要であるということであります。このことは両者の関係の質が変わったということを意味します。「問題」や「病」だけで結びついた関係は、より多くの苦痛を両者にもたらしますし、両者が離れたくないと思えばそれは悲劇的な結果となります。他の多くの要因、それも「問題」や「病」といったことよりも望ましい要因で両者が結びつくことができれば、クライアントはカウンセリングや「治療」が苦にならなくなり、そのために結果的には長期化してしまっても、クライアントは目に見えて良くなっていくものであるということであります。 

 

 もし、いま仮にここに二十年間治療を受け続けている「精神病」と診断された患者さんが二人いるとします。一方の患者さんは、その二十年間、一人の医師の治療を受けていました。他方の患者さんは、その二十年間、何人もの医師の治療を受けていました。この二人の患者さんは、二十年間治療を受けてきたという点では違いはありませんが、両者はまったく異なった経験をしているのであります。 

 一人の医師で治療を続けてきた方の患者さんは、それだけの期間、一人の人間と関係を築くことができているのであり、そのようなことができるということは、「治って」いるのであります。 

 医師を次から次へと代えていったもう一方の患者さんは、関係を築くことができずにいるのであります。二十年経った今でもそれができないでいるのです。他者と「安心」や「信頼」で結びつくことができずにいるのであります。 

 「治療」にかけている時間は同じでありますが、そこで何を経験しているかはまったく違っているのであります。時間の長短というのは、本当は二の次のことであるはずで、肝心なのは、その患者さんが何を体験している二十年であったかということにあると言えるのであります。 

 

(文責:寺戸順司―高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー