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2022年3月6日 日曜日

3月6日:唯我独断的読書評~『2061年宇宙の旅』

3月6日(日):唯我独断的読書評~『2061年宇宙の旅』 

 

 若いころに購入して、その後20年も30年も未読のまま放置されている本が僕には何冊かある。まあまあの記録的恥だ。何度か本書も読もうとしたのだけれど、僕の「科学アレルギー」が発生してしまうのだ。今回、科学アレルギーを圧してなんとか読むことができた。そんなに悪くないというのが今の感想だ。ちなみに、身辺整理にはこういう作業も含まれている。書物は読まれるために作られたものだ。処分するにしても、読んでやらないとその本が浮かばれないように思うのだ。だから、通読でもいいから読んで、それから処分しようと決めている。それで本も成仏できるだろう。 

 

 さて、本書はタイトルを見て分かるように、『2001年』『2010年』に続く『宇宙の旅』三部作のラストを飾る作品である。前二作のエピソードも随所に顔を出すけれど、基本的に、前二作とは独立した作品として読むことができる。 

 現実には2001年も2010年も過去になっているけれど、2061年はこれからである。なぜこの年かと言うと、75年に一度地球に接近するハレー彗星の次回の接近年であるからだ。 

 では、2061年には技術はどうなっているか。ミューオン駆動の実用化によって、人類は今まで不可能だった宇宙探索が実現可能になっている時代である。ちなみに、「ミューオン駆動とは何?」などと僕に訊かないでくれ。低温核融合による動力であるそうだが、科学に疎い僕にはさっぱり分かっていないのである。 

 ヘイウッド・フロイド博士は、高齢であるが、ハレー彗星の探査計画を要請され、三たび宇宙の旅に出る。ミューオン駆動搭載の宇宙船ユニバース号に乗船し、ハレー彗星に着陸する。 

 ハレー彗星を探査中、緊急通信が彼らに届く。木星探査中のギャラクシー号が惑星エウロパに不時着したので救出に向かうよう求められる。ギャラクシー号にはフロイド博士の孫が乗船している。彼らはエウロパ目指して出発する。 

 木星は今はいくつもの惑星に分裂している。ルシファーと呼ばれる太陽のような惑星を中心にいくつもの惑星が小さな太陽系を形成している。エウロパはその惑星群の一つであるが、ここは禁断の地とされている。というのは、かつてエウロパに着陸した宇宙飛行士たちはそこに済む未確認生物によって全滅しているためである。 

 そんな危険な惑星にどうしてギャラクシー号は不時着したのか。それは同船がハイジャックされたためである。一体、エウロパに何があるのか、誰がこういう陰謀を企てたのか。 

 以後、ギャラクシー号での捜査活動とユニバース号の救出活動とが並行して物語が進展していく。 

 

 とは言え、語られることの大部分は宇宙船内の乗員たちの日常である。若手の作家だったらアクションを交えたり、スリリングな場面をもっと盛り込みたくなるところであるが、アーサー・C・クラークの円熟した筆は、そんな煽情的な描写を一切省き、丁寧なまでに淡々と彼らの日常(宇宙船の中での日常という意味だ)を描く。好き嫌いは別としても、熟練の味わいを感じさせるところである。 

 

 しかし、これらがすべて作者のイマジネーションなんだと思うと驚愕せずにはいられない。誰もハレー彗星の表面がどんなふうになっているのかなんて知らないし、どんなものがあるのかも知らない。木星の惑星群もそうであるし、極端に言えば、2061年の宇宙船内の生活がどんなものかなんてことも誰も知らないのではないか。すべて作者の創造である。本文のすべての行に作者のイマジネーションが込められている。一行一行に創作が含まれている。誇張のように聞こえるかもしれないけれど、本当にそういう印象を受けるのである。 

 ハレー彗星にしろエウロパにしろ、その情景描写は、あたかも紀行作家が目にした自然の情景描写のように、自然に見えてしまう。なんの違和感も、なんの不自然さも感じることなく、惑星の情景描写をスラスラ読んでいる自分に、僕は後からビックリしたよ。 

 

 また、このシリーズではお馴染みのモノリスも登場する。宇宙のどこかに、人類よりもはるかに優れた知性が存在しているのだ。その存在者は、人類の進化を導き、人類を新たな存在にしていくのだ。そういう存在者の存在がモノリスで表されているのだと思う。SFであると同時に、はるかに深遠なテーマ、神学的といってもいいほどの壮大なテーマをも扱っているのである。 

 

 30年近く放置してきたくせに、読んだら読んだで偉そうに語るのだから、我ながら情けない。 

 科学や物理学、地質学などの知識が皆無でも読むことができ、学術的な話はチンプンカンプンなくせに良質のSF小説を読んだという満足感が残る。ど素人でも楽しめた作品であるということであるが、科学の素養のある人だったらもっと楽しめるのかもしれない。 

 

 僕の唯我独断的評価は4つ星だ。ワケの分からんところも多々あれど、読むとけっこう楽しめる作品だった。 

 

<テキスト> 

『2061年宇宙の旅』(2061:Odyssey Three)(1987年) 

アーサー・C・クラーク著 山高昭訳 早川書房 

 

 

(寺戸順司-高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー) 

投稿者 高槻カウンセリングセンター