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2020年8月31日 月曜日

8月31日:ミステリバカにクスリなし~『三角形の第四辺』

8月31日(月):ミステリバカにクスリなし~『三角形の第四辺』(E・クイーン) 

 

 なかなかミステリを読むヒマもないんだけれど、なんとか月に二冊くらいは読んでいる。読んだものは読書評にして残しておきたいんだけれど、今度は書くヒマがないとくる。上手くいかないものだ。 

 ミステリに関しては、あまり内容とかトリックとかを言うわけにはいかないし、犯人が分かるような記述は避けなければならない。そういう規制(って自分で作っているわけだけれど)があるので書きにくい。今回はウッカリ犯人を言ってしまいそうだ。 

 今回はエラリー・クイーンの1965年の長編『三角形の第四辺』を取り上げる。クイーン晩年の一作だ。 

 

「父に女がいる」。母親から聞いた言葉をデインは信じられなかった。実直で一筋のビジネスマンである父が浮気をしているとは。デインは父を尾行し、相手の女を突き止める。デザイナーのシーラである。彼はさらに調査しようとシーラに近づくが、やがてシーラに恋するようになる。父親の愛人に恋愛感情を抱くデイン。デインがシーラとちょっとしたいさかいを起こした夜、シーラは何者かによって射殺される。 

 事件が起きるまでに100ページ(本文の3分の1)費やされている。一族の歴史から説き起こし、各登場人物の背景まで丹念に書き込まれた文章は、文学作品として厚みを出しているものの、いささか冗長に感じられるところもある。そこは本作の難点の一つだ。 

 事件の容疑者として父が逮捕される。デインたちは父の無罪を証明すべくエラリーに依頼する。こうしてエラリーの出馬となるのだけれど、今回、エラリーは足を骨折したという設定で、ひたすら病室の中で安楽椅子探偵を演じる。主人公が動けないという設定は、主人公の活躍を期待する読者を失望させるかもしれず、そこが第二の難点だ。 

 しかしながら、主人公が動けないということでトリックが成立している部分もあるようだ。もし、エラリーが動き回っていたら、父の無罪を証明すると同時に犯人を追及していたのではないかと思う。エラリーが動けないので容疑者が二転三転する面白さがあるように思う。 

 さて、ここは上手いと思ったところだ。父の無罪を証明するためにエラリーは証拠として上がっていない品物を指摘する。僕はウッカリしていて、一本取られたと思った。というのも、事件発生までの第一部を読んでいるので、当然証拠として上がっていいはずのアレが上がってこないのを不思議に思う。アレはどうなったのかと、アレにばかり気を取られていて、ソレが証拠として上がっていないことにまったく気づいていなかった。 

 また、第三部までは犯人は誰かという興味で引っ張り、第四部で恐喝者を登場させる辺り、なかなか見事である。新たな恐喝者の登場で、犯人と恐喝者が同一人物であるか否かといった謎が新たに生まれる。プロットが巧みに作られている感じがした。この恐喝者の存在が明らかになることによって、若干ダレがちになっている終盤が引き締まったように感じられ、物語が大きく展開したように僕は感じた。 

 捜査が進むにつれてシーラの過去や人間関係が露わにされる。シーラのイメージがその都度変わってくる感じがした。けっこうな悪女というイメージに僕は落ち着いてしまった。 

 エラリーによって謎は解かれる。クイーンお得意の言葉遊びのような暗号トリックも健在である。しかし、後味の悪さが残る。というのは、エラリーは謎を解いたが、真犯人を指摘することに失敗しているからである。これが第三の、そして最大の難点である。 

 しかしなあ、もし彼が犯人なら、あの時点で殺しているはずだという気もするのだ。それに、射殺後に手がかりをとっさに修正するような時間があったのか疑問に思う。いさかいだけであれだけ動揺するくせに射殺後は冷静に証拠修正できるというのは、どうもパーソナリティに一貫性が感じられないような気がしてならない。 

 いけない、今の一文は犯人が誰であるかを示唆してしまっている。 

 

 さて、既に述べたように本書の難点が三つある。細部まで書き込まれた文体、主人公の動きがないこと、主人公が真犯人の指摘に失敗していること、これらの難点があるにも関わらず、本書はそれなりに面白かった。 

 登場人物たちも魅力である。デインは、彼だけが一族の異端児であり、アイデンティティがしっかり確立できていない。自分の拠り所というか足場となるものをしっかり持っていないのだ。おまけに衝動的な性格傾向がある。家族思いの強い一面がある一方で、けっこうなサイコ野郎的な部分もあったりする。シーラのような女と関係してしまうだろうな。 

 まあ、それはそれとして、僕の唯我独断的評価は3つ星半だ。4つ星をつけたいところなんだけれど、難点の部分で減点になった。 

 

<テキスト> 

『三角形の第四辺』(The Fourth Side of The Triangle、1965)-エラリー・クイーン著(青田勝 訳)ハヤカワミステリ文庫 

 

(寺戸順司―高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー) 

投稿者 高槻カウンセリングセンター