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2020年9月11日 金曜日

9月11日:ミステリバカにクスリなし~『恐怖の谷』

9月11日(金):ミステリバカにクスリなし~『恐怖の谷』(ドイル) 

 

 コナン・ドイルのシャーロック・ホームズものは、長編が4作あり、本作はその第4作目に当たる。1914年の作品。 

 何度もこの作品は読んだけど、読むたびに面白いなと感じる。一般的には『バスカヴィル家の犬』が長編としては最高作であるように見られているのだけれど、本作もそれに劣るとも思えない。ディクスン・カーは本作の方を高く評価しているようだけれど、頷けなくもない。 

 内容は二部に分かれている。『緋色の研究』『四つの署名』同様、第1部でホームズが活躍し、第2部は事件の背景にある物語が綴られている。ホームズの活躍が半分というのは物足りないかもしれないけれど、ホームズものともう一つの作品とがセットになっていると考えればお得感が増すというものだ。 

 

 さて、本作の冒頭、第1章はホームズが暗号文を受け取るところから始まる。持ち前の聡明さでホームズはこんな暗号をチョイチョイと解読してしまう。そこにはダグラスという男が殺されることが予告されていた。すると、警察がやってくる。ダグラスが殺されてホームズに捜査の助力を求めてくる。 

 この第1章はホームズがあっさりと暗号を解読するところから、他の作品でもよく見られるホームズの余技のような部分に見えるかもしれない。物語の本題に入る前にホームズが推理を披露する部分に見えるかもしれない。ところが、本作ではそうではない。僕たち読者はダグラスが殺されるということをすっかり信じ込んでしまうのだ。この第1章から読者は作者の術中に呆気なく陥ってしまうのだ。 

 おっと、あまり内容に触れるわけにはいかない。でも、この術は第二部でも用いられる。僕たちは第1部でそれに引っかかっておるにも関わらず、第2部でも同じような術にひっかかってしまうのである。立て続けに一本取られてしまうのだけど、それもまた快感である。 

 その後、物語はホームズが現場に赴き、関係者と会い、手がかりを探し求めるというふうに続いていく。警察は誤った推理を導く役割なので、警察側の考えには従ってはいけない。窓際に残された犯人と思われる人物の靴跡や、逃走に用いられたと判断されている自転車など、そうした推理に流されてはいけない。 

 それがわかっていても、ホームズのようには考えられないものである。片方しかない鉄アレイがどうして重要なのか、まったく見当がつかない。後から説明を聞いて、なんだ、そういうことかと分かってしまう。この感じがホームズものの醍醐味である。もちろん、僕の個人的見解に過ぎないけれど。 

 そしていつものようにホームズは鮮やかに事件を解決する。 

 

 続いて第2部である。タイトルにもなっている「恐怖の谷」が舞台の物語である。 

 この第2部は単独で読んでも面白い内容である。舞台はアメリカに移り、シカゴからヴァーミッサ(架空の都市である)の炭鉱町へ一人の男が来た。第2部の主人公マクマードである。 

 マクマードはこの町で「大自由人団」という組合に入る。しかし、この組合は権力と武力を行使する犯罪組織であり、マクマードはこの犯罪組織で頭角を現し、支部長補佐にまでのしあがる。 

 マクマードと相思相愛の関係になった娘エティはそんな彼を組織から抜け出させようと試みる。悪の道を驀進するマクマードと純真なエティの恋の行方がどうなるのか、ついついこういうロマン小説っぽい目で読んでしまう。これがまた作者の仕掛ける術なんだな。最後の意外な展開ですっかり一本取られてしまうことになる。 

 

 さて、本書は1914年の作品である。第一次世界大戦の年であり、同年、ドイルは息子を失うことになる。この経験はドイルにはショックだったのだろうか、翌年ころからドイルは心霊研究に打ち込むようになる。心霊研究は晩年のドイルの活動で大きなウエイトを占めている。没年までの15年ほどの間に、それに関する本を10冊も出版したというのだから相当な入れ込みようである。 

 もし、戦争がなく、息子と死別するという悲劇をドイルが経験しなかったら、僕たちはホームズの長編5作目や第6短編集を読むことができていたかもしれない。そう思うと残念な気持ちに襲われる。 

 本書のラストで、ホームズは宿敵モリアーティ教授に対する敵意を露わにする。あたかも次回作ではホームズとモリアーティが全面抗争することを予告しているかのようである。もしかしたらその時のドイルの頭の中にはそういう構想があったのかもしれない。もし、そういう長編が書かれていたら、僕は間違いなく読んでいただろうし、この自己満足のブログにも感想を書いていただろうと思う。 

 

 さて、本書の唯我独断的評価だけれど、5つ星を進呈しよう。4つ星半にしようかと思ったけれど、僕の個人的な思い入れを加味して満点の評価にした。 

 

<テキスト> 

『恐怖の谷』(The Valley of Fear、1915)-コナン・ドイル著 

安部知二 訳 創元推理文庫 

 

(寺戸順司―高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー) 

投稿者 高槻カウンセリングセンター